require 'bigdecimal'
a=BigDecimal::new("0.123456789123456789")
b=BigDecimal("123456.78912345678",40)
c=a+b
以下のメソッド以外にも、(C ではない) Ruby ソースの形で
提供されているものもあります。例えば、文字列から BigDecimal への
変換や、"0.xxxxxEn" という形式ではなく "nnnnn.mmmm" の形式の文字列
へ変換するメソッド等があります。利用するには
のようにします。詳細は util.rb の内容を参照して下さい。
require "bigdecimal/util.rb"
新しい BigDecimal オブジェクトを生成します。
a=BigDecimal::new(s[,n]) または
a=BigDecimal(s[,n])
s は初期値を文字列で指定します. n は必要な有効桁数(a の最大有効桁数)を整数で指定します。 n が 0 または省略されたときは、n の値は s の有効桁数とみなされます。 s の有効桁数より n が小さいときも n=0 のときと同じです。 a の最大有効桁数は n より若干大い値が採用されます。 最大有効桁数は以下のような割り算を実行するとき等に意味を持ちます。ただし、個々の演算における最大有効桁数 n の取り扱いは将来のバージョンで 若干変更される可能性があります。
BigDecimal("1") / BigDecimal("3") # => 0.3333333333 33E0 BigDecimal("1",10) / BigDecimal("3",10) # => 0.3333333333 3333333333 33333333E0
BigDecimalの実行結果を制御します。以下の使用方法が定義されています。[例外処理]
計算結果が非数(NaN)やゼロによる除算になったときの処理を定義することができます。
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_NaN,flag)EXCEPTION_NaN は結果が NaN になったときの指定です。
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_INFINITY,flag)
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_UNDERFLOW,flag)
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_OVERFLOW,flag)
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_ZERODIVIDE,flag)
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::EXCEPTION_ALL,flag)
EXCEPTION_INFINITY は結果が無限大(±Infinity)になったときの指定です。
EXCEPTION_UNDERFLOW は指数部がアンダーフローするときの指定です。
EXCEPTION_OVERFLOW は指数部がオーバーフローするときの指定です。
EXCEPTION_ZERODIVIDE はゼロによる割り算を実行したときの指定です。
EXCEPTION_ALL は、可能な全てに対して一括して設定するときに使用します。
flag が true のときは、指定した状態になったときに例外を発行するようになります。
flag が false(デフォルト)なら、例外は発行されません。計算結果は以下のようになります。
EXCEPTION_NaN のとき、非数(NaN)EXCEPTION_INFINITY、EXCEPTION_OVERFLOW、EXCEPTION_ZERODIVIDE は今のところ同じです。
EXCEPTION_INFINITY のとき、無限(+ or -Infinity)
EXCEPTION_UNDERFLOW のとき、ゼロ
EXCEPTION_OVERFLOW のとき、+Infinity か -Infinity
EXCEPTION_ZERODIVIDE のとき、+Infinity か -Infinity
戻り値は、設定前の値です。「値」の意味は、例えば BigDecimal::EXCEPTION_NaNと「値」の & が ゼロ以外ならば EXCEPTION_NaNが設定されているという意味です。
引数に正しくないものが指定された場合は nil が返ります。[丸め処理指定]
計算途中の丸め操作の指定ができます。
f = BigDecimal::mode(BigDecimal::COMP_MODE,flag)の形式で指定します。
ここで、flag は以下の一つを指定します。戻り値は指定前の flag の値です。 引数に正しくないものが指定された場合は nil が返ります。
COMP_MODE_TRUNCATE 全て切り捨てます(truncate)。 COMP_MODE_ROUNDUP 四捨五入します(roundup、デフォルト)。 COMP_MODE_CEIL 数値の大きい方に繰り上げます(ceil)。 COMP_MODE_FLOOR 数値の小さい方に繰り下げます(floor)。 COMP_MODE_EVEN 四捨六入します。5の時は上位1桁が奇数の時のみ繰り上げます(Banker's rounding)。
mode メソッドでは丸め操作の位置をユーザが指定することはできません。 丸め操作と位置を自分で制御したい場合は truncate/roundup/ceil/floor といった インスタンスメソッドを使用して下さい。
生成されるBigDecimalオブジェクトの最大桁数をn桁に制限します。戻り値は 設定する前の値です。設定値のデフォルト値は0で、桁数無制限という意味です。 nを指定しない場合は、現状の最大桁数が返ります。
mf = BigDecimal::limit(n)
Ruby の Float クラスが保持できる有効数字の数を返します。double_figは以下の C プログラムの結果と同じです。
p BigDecimal::double_fig # ==> 20 (depends on the CPU etc.)
double v = 1.0; int double_fig = 0; while(v + 1.0 > 1.0) { ++double_fig; v /= 10; }
内部で使用される基数の値です。整数が 32 ビットの処理系では10000です。
b = BigDecimal::BASE
加算(c = a + b)
c の精度については「計算精度について」を参照してください。
減算(c = a - b)、または符号反転(c = -a)
c の精度については「計算精度について」を参照してください。
乗算(c = a * b)
cの精度は(aの精度)+(bの精度)程度です。
詳しくは「計算精度について」を参照してください。
除算(c = a / b)
c の精度については「計算精度について」を参照してください。
以下のように使用します。
c = a.add(b,n)
c = a + b を最大で n 桁まで計算します。 a + b の精度が n より大きいときは丸められます。
以下のように使用します。
c = a.sub(b,n)
c = a - b を最大で n 桁まで計算します。 a - b の精度が n より大きいときは丸められます。
以下のように使用します。
c = a.mult(b,n)
c = a * b を最大で n 桁まで計算します。 a * b の精度が n より大きいときは丸められます。
以下のように使用します。
c,r = a.div(b,n)
c=a/b の計算をします。 r には剰余が代入されます。a/bは 必要ならn 桁まで計算されます。divmod メソッド と異なり、c は整数とは限りません。 また、 c は丸められることはありません。 a = c*b + r の関係は成立します。
r = a%b
a/b の余りを計算します。以下の計算と同じものです。
r = a-((a/b).floor)*b
a の小数点以下の切り捨て。
c = a.fix
a の整数部分の切り捨て。
c = a.frac
c = a.floor
a 以下の最大整数(BigDecimal 値)を返します。以下のように引数 n を与えることもできます。
c = BigDecimal("1.23456").floor # ==> 1 c = BigDecimal("-1.23456").floor # ==> -2
n>=0 なら、小数点以下 n+1 位の数字を操作します(少数点以下を、最大 n 桁にします)。
n が負のときは小数点以上 n 桁目を操作します(小数点位置から左に少なくとも n 個の 0 が並びます)。
c = BigDecimal::new("1.23456").floor(4) # ==> 1.2345 c = BigDecimal::new("15.23456").floor(-1) # ==> 10.0
c = a.ceil
a 以上の整数のうち、最も小さい整数を計算し、その値(BigDecimal 値)を返します。以下のように引数を与えて、小数点以下 n+1 位の数字を操作することもできます。
c = BigDecimal("1.23456").ceil # ==> 2 c = BigDecimal("-1.23456").ceil # ==> -1
n>=0 なら、小数点以下 n+1 位の数字を操作します(少数点以下を、最大 n 桁にします)。
n が負のときは小数点以上 n 桁目をを操作します(小数点位置から左に少なくとも n 個の 0 が並びます)。
c = BigDecimal::new("1.23456").ceil(4) # ==> 1.2346 c = BigDecimal::new("15.23456").ceil(-1) # ==> 20.0
c = a.round
小数点以下第一位の数を四捨五入して整数(BigDecimal 値)にします。
以下のように引数を与えて、小数点以下 n+1 位の数字を操作することもできます。
c = BigDecimal("1.23456").round # ==> 1 c = BigDecimal("-1.23456").round # ==> -1
n が正の時は、小数点以下 n+1 位の数字を四捨五入します(少数点以下を、最大 n 桁にします)。
n が負のときは小数点以上 n 桁目をを操作します(小数点位置から左に少なくとも n 個の 0 が並びます)。2番目の引数(デフォルトは 0)にゼロ以外を指定すると、いわゆる Banker's rounding になります。
c = BigDecimal::new("1.23456").round(4) # ==> 1.2346 c = BigDecimal::new("15.23456").round(-1) # ==> 20.0
Banker's rounding とは、四捨五入する数字を p として、p < 5 なら切り捨て p > 5 なら切り上げ、 p がちょうど5のときだけは切り上げ先の数字+1が偶数になるときだけ切り上げます。
c = BigDecimal::new("1.23456").round(3,1) # ==> 1.234 c = BigDecimal::new("1.23356").round(3,1) # ==> 1.234
c = a.truncate
小数点以下の数を切り捨てて整数(BigDecimal 値)にします。
以下のように引数を与えて、小数点以下 n+1 位の数字を操作することもできます。
n が正の時は、小数点以下 n+1 位の数字を切り捨てます(少数点以下を、最大 n 桁にします)。 n が負のときは小数点以上 n 桁目をを操作します(小数点位置から左に少なくとも n 個の 0 が並びます)。
c = BigDecimal::new("1.23456").truncate(4) # ==> 1.2345 c = BigDecimal::new("15.23456").truncate(-1) # ==> 10.0
商と剰余の配列を返します。
c,r = a.divmod(b) # a = c*b + r
divmodメソッドは a = c * b + r となる a / b の浮動小数点型の商 c と剰余 r を 計算します。ここで c は整数(少数部分のない実数)になります。
c = (a/b).floor
r = a - c*b
で計算されます。
r=a.remainder(b)
a/b の剰余 r を計算します。
c = (a/b).fix
r = a - c*b
で計算されます。
aの絶対値
c = a.abs
少数点以下を切り捨てて整数に変換します。
i = a.to_i
i は値に応じて Fixnum か Bignum になります。 a が Infinity や NaN のとき、i は nil になります。
Float オブジェクトに変換します。 よりきめ細かい値が必要ならば split メソッドを利用して ください。
文字列に変換します("0.xxxxxEn"の形になります)。
s = a.to_s
n が指定されたときは、仮数部分を n 桁毎に空白で区切ります。
s = a.to_s(n)
指数部を整数値で返します。 n = a.exponent
は a の値が 0.xxxxxxx*10**n を意味します。
n,m = a.prec
a の有効数字 (n) と最大有効数字 (m) の配列を返します。
値が正(sign > 0)、負(sign < 0)、その他(sigh==0)であるかの情報を返します。 n = a.sign
としたとき n の値は a が以下のときを意味します。
() の中の数字は、実際の値です(「内部構造」を参照)。
n = BigDecimal::SIGN_NaN(0) : a は NaN
n = BigDecimal::SIGN_POSITIVE_ZERO(1) : a は +0
n = BigDecimal::SIGN_NEGATIVE_ZERO(-1) : a は -0
n = BigDecimal::SIGN_POSITIVE_FINITE(2) : a は正の値
n = BigDecimal::SIGN_NEGATIVE_FINITE(-2) : a は負の値
n = BigDecimal::SIGN_POSITIVE_INFINITE(3) : a は+Infinity
n = BigDecimal::SIGN_NEGATIVE_INFINITE(-3) : a は-Infinity
a.nan? は a がNaNのとき真を返します。
a.infinite? は a が+∞のとき 1 、-∞のときは -1、それ以外のときは nil を返します。
a.finite? は a が∞または NaN でないとき真を返します。
a が 0 なら true になります。
c = a.zero?
a が 0 なら nil、0 以外なら a そのものが返ります。
c = a.nonzero?
BigDecimal 値を 0.xxxxxxx*10**n と表現したときに、符号(NaNのときは 0、それ以外は+1か-1になります)、 仮数部分の文字列("xxxxxxx")と、基数(10)、更に指数 n を配列で 返します。
a=BigDecimal::new("3.14159265")
f,x,y,z = a.split
とすると、f=+1、x="314159265"、y=10、z=1になります。
従って、
s = "0."+x
b = f*(s.to_f)*(y**z)
で Float に変換することができます。
デバッグ出力に使用されます。
p a=BigDecimal::new("3.14",10)
とすると、[0x112344:'0.314E1',4(12)]のように出力されます。 最初の16進数はオブジェクトのアドレス、次の '0.314E1' は値、 次の4は現在の有効桁数(表示より若干大きいことがあります)、 最後はオブジェクトが取り得る最大桁数になります。
a の n 乗を計算します。nは整数。
c = a ** n
結果として c の有効桁は a の n 倍以上になるので注意。
** と同じで、a の n 乗を計算します。nは整数。
c = a.power(n)
結果として c の有効桁は a の n 倍以上になるので注意。
aの有効桁 n 桁の平方根(n の平方根ではありません)を ニュートン法で計算します。
c = a.sqrt(n)
a==b なら 0、a > b なら 1、a < b なら -1 になります。
c = a <=> b
自然対数の底e(=2.718281828....)を計算します(正直にテイラー展開で)。
e = BigDecimal::E(n)
nは必要な有効桁数を整数で指定します。
円周率(=3.14159265358979....)を計算します(J.Machinの公式を用います)。
e = BigDecimal::PI(n)
n は必要な有効桁数を整数で指定します。
a の有効桁 n 桁の sin と cos を同時に(テイラー展開で)計算して、 sin と cos の配列を返します。 n は必要な有効桁数です( n の sin や cos を計算するわけではありません)。
sin,cos = a.sincos(n)
|a| < 2*3.1415....でないと正しい答えを計算できないこともあります。
自然対数の底e(=2.718281828....)の a 乗を計算します。
c = a.exp(n)
n は必要な有効桁数です。
a = BigDecimal.E(20)
c = a * "0.123456789123456789123456789" # 文字を BigDecimal に変換してから計算
無限大や非数を表す文字として、"Infinity"、"+Infinity"、"-Infinity"、"NaN"
も使用できます(大文字・小文字を区別します)。ただし、mode メソッドで false を
指定した場合は例外が発生します。
a = BigDecimal.E(20)
c = "0.123456789123456789123456789" * a # エラー
必要性があるとは思いませんが、どうしてもと言う人は
String オブジェクトを継承した新たなクラスを作成してから、
そのクラスで coerce をサポートしてください。
require "bigdecimal"
aa = %w(1 -1 +0.0 -0.0 +Infinity -Infinity NaN)
ba = %w(1 -1 +0.0 -0.0 +Infinity -Infinity NaN)
opa = %w(+ - * / <=> > >= < == != <=)
for a in aa
for b in ba
for op in opa
x = BigDecimal::new(a)
y = BigDecimal::new(b)
eval("ans= x #{op} y;print a,' ',op,' ',b,' ==> ',ans.to_s,\"\n\"")
end
end
end
typedef struct {
unsigned long MaxPrec; // 最大精度(frac[]の配列サイズ)
unsigned long Prec; // 精度(frac[]の使用サイズ)
short sign; // 以下のように符号等の状態を定義します。
// ==0 : NaN
// 1 : +0
// -1 : -0
// 2 : 正の値
// -2 : 負の値
// 3 : +Infinity
// -3 : -Infinity
unsigned short flag; // 各種の制御フラッグ
int exponent; // 指数部の値(仮数部*BASE**exponent)
unsigned long frac[1]; // 仮数部の配列(可変)
} Real;
例えば 1234.56784321 という数字は(BASE=10000なら)0.1234 5678 4321*(10000)**1ですから frac[0]=1234、frac[1]=5678、frac[2]=4321、 Prec=3、sign=2、exponent=1 となります。MaxPrecは Prec より大きければいくつでもかまいません。flag の 使用方法は実装に依存して内部で使用されます。
file = File::open(....,"r")
s = BigDecimal::new("0")
while line = file.gets
s = s + line
end
この例を2進数でやると誤差が入り込む可能性があります。
例えば 0.1 を2進で表現すると 0.1 = b1*2**(-1)+b1*2**(-2)+b3*2**(-3)+b4*2**(-4)....
と無限に続いてしまいます(b1=0,b2=0,b3=0,b4=1...)。ここで bn(n=1,2,3,...) は
2進を表現する 0 か 1 の数字列です。従って、どこかで打ち切る必要があります。
ここで変換誤差が入ります。もちろん、これを再度10進表記にして印刷するような
場合は適切な丸め操作(四捨五入)によって再び "0.1" と表示されます。しかし、
内部では正確な 0.1 ではありません。
#!/usr/local/bin/ruby
#
# pi.rb
# USAGE: ruby pi.rb n
# where n is the number of digits required.
# EX.: ruby pi.rb 1000
#
require "bigdecimal"
#
# Calculates 3.1415.... using J. Machin's formula.
#
def big_pi(sig) # sig: Number of significant figures
exp = -sig
pi = BigDecimal::new("0")
two = BigDecimal::new("2")
m25 = BigDecimal::new("-0.04")
m57121 = BigDecimal::new("-57121")
u = BigDecimal::new("1")
k = BigDecimal::new("1")
w = BigDecimal::new("1")
t = BigDecimal::new("-80")
while (u.exponent >= exp)
t = t*m25
u,r = t.div(k,sig)
pi = pi + u
k = k+two
end
u = BigDecimal::new("1")
k = BigDecimal::new("1")
w = BigDecimal::new("1")
t = BigDecimal::new("956")
while (u.exponent >= exp )
t,r = t.div(m57121,sig)
u,r = t.div(k,sig)
pi = pi + u
k = k+two
end
pi
end
if $0 == __FILE__
print "PI("+ARGV[0]+"):\n"
p pi(ARGV[0].to_i)
end